(※記事と写真とは何の関係もありませんので、ご了承下さい)
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その日ボクは、兄貴とその先輩達に連れられ、『必ず幽霊が観られる廃屋』に向かっていました。
どういう経緯でそうなったのかまでは、残念ながら覚えてはいません。
ただ、兄貴とその先輩達に連れられ、半ば『強制連行』の様な状態で行ったのだけは覚えています。
漆黒の闇に包まれるその時間、誰かの運転する車の後部座席、怨念漂う廃屋を目指しながら……。
到着し、その廃屋を目にします。
いつ無人となったかも知れぬ廃屋、ともすれば『ただの空き家でしょ?』と思われるそこも、今や心霊スポット。
訪れたなら、必ずや幽霊が観られるというのは、兄貴達の言葉。
― 幽霊なんて本当にいるの?
兄貴の先輩が車を持っていた事を考えれば、恐らくそれは、ボクが中学生頃の事。
が、何故か朧気にしか思い出せない、その時の記憶。
理由は本当に分からないのですが、とにかくその時の記憶が、とても曖昧で夢の様なのですよ。
誰か「あ、影が動いた!」
誰か「本当だ、俺にも見えた!」
誰か「どこだよ、俺には見えなかった!」
兄貴とその先輩達、廃屋を眺めながら、口々に叫びます。
流れる光を見たとか、影がうっすらと横切ったとか、通常ではあり得ない物体を目撃したと。
真っ暗闇の中、街頭の光のみを頼りとしながら、『得体の知れぬ者の存在を感じた』と。
恐怖の体験。
そこにいた『全員』が、理解不能の存在を、その目に映した。。。
兄貴「凄かったな、あの気持ち悪い影!」
ボク「う、うん、そうだね(汗)」
兄貴「影が右から左に行ったべ? あれって絶対に霊だぞ!」
ボク「うん……」
帰り道、異常なまでに盛り上がる車内。
全員が幽霊とやらを目にし、得体の知れない存在を知った、そんな瞬間。
漆黒よりも暗き闇が廃屋を徘徊していたと、そんな情報が飛び交う中、ただ沈黙を守るボク。
幽霊という、曖昧で不確かな存在。
あの廃屋に行ったならば、必ずしも誰もが目撃する事が出来るという、最強の心霊スポット。
実際に観られた。あの車の中にいた全員が、黒い影の存在を目の当たりにした……。
『ボク以外』の全員が!(焦)
ええ、実はその時、ボクだけが『何も見えなかった』のですよ。
皆が叫ぶ中、冷静にその廃屋を眺めていたボク『だけ』に、幽霊は姿を現さなかったのです。
全員の目には、その不可思議な姿が、朧気ながらも映っていた筈なのに。。。
皆が全員観ていたのに、ボク『だけ』には何故か、何も見えなかった……。
逆の意味での、恐怖体験でした(汗)。