『3K』という言葉って、もうとっくの昔に死語なのでしょうか?
分かりませんが、もしもこの言葉が生きていたなら、ボクの仕事は正に3K。
キツイ、汚い、給料安い、格好悪いの三拍子です……って、気がついたら四拍子になってた(汗)。
そんなボクの仕事は、建設関係。
普段はじっとPCに向かい、胡散臭い計算式や、『数字だけ』の金と向かい合う毎日。
たまに山奥や田舎の現場に行っては、棘だらけの草むらや、得体の知れない昆虫たちと戦っています。
曇天模様の空の下、今日の仕事の打ち合わせは、熊でも出そうな山の奥。
作業服を着込みヘルメットを被り、険しい岩山を歩きます。
そうして到着した問題の現場、周囲をぐるり見渡すと、ポイントになりそうなものを探しました。
― 岩の隙間から染み出す水、これは地中の水位が高い証拠。
― 足下に落ちた石の欠片、断面の鋭利で新鮮な様子から、山自体の亀裂の度合いが窺える。
― 所々隆起した岩と、その真横に広がる草原。ポイントは、この辺か……。
一通り現場の特性を掴んだら、次は、もっとも重要なミッションへ。
仕事相手と並んで歩き、現場の特徴を語りながらも、視線だけを絶えず動かします。
しかし、ボクが以前住んでいた地方とは、似ている様で違う風景。自分のこれまでの経験が、まるで通じないのです。
……これは一体、どうなっているんだ!?(混乱)
焦る気持ちをじっと抑え、努めて冷静を振る舞うボク。
相手の言葉には即座に応答し、そこに一言プラスする事で、『それなりに知識を持った男』を演出します。
しかし心の中は乱れまくり。目の前に広がる光景に、パニックしきりです(汗)。
そんな筈は無い、この山の形状で、こんな事はあり得ないんだっ!(焦)
心の中で叫ぶボクを嘲笑うかの様に、悠然と立ちはだかる自然の驚異。
あの山と同じ筈なのに、あの丘と同じ筈なのに、確かに感じるこの奇妙な違和感。
今まで住んでいた場所ならば、とっくに見つかっていただろうアレが、どれだけ探そうとも見つからないのですよ。
そうして諦めかけていた、正にその時。
目の前に現れたソレに、ボクは思わず心の中で、歓喜の叫びを上げました。
あった! この木だっ!(喜)
可能な限り『自然な態度』を装いながら、そっとその木に近づいて行くボク。
が……。
思いっ切り育ちすぎていて、もう天麩羅には出来ない!!!(大泣)
今日のボクの一番重要なミッション、それは、『タラの芽の場所を見つけておく』こと。
しかしようやく見つけたそれは、とっくの昔に葉が開いていて、とても食べられる状態ではありません。
失意に暮れたボクは、仕方が無いので、真面目に仕事をする事にしました。仕事相手に悟られぬ様、表情を変えずに。
今シーズンのボク、一度もタラの芽を食べられずに終わってしまいました(涙)。