これは今からもう、数年も前の話です。
当時の上司や同僚と、出張先で、昼食を摂ろうという事になったのですよ。
で、たまたま入ったのは、漁港近くの小さな食堂。
皆それぞれに好きなものを注文し、何となく見上げた壁、その札は下げられていました。
『ミヨ 380円』
ボク「……」
同僚「……」
上司「……」
ミヨって何!?(汗)
何しろ初めて聞くメニュー、それが何なのか、誰にも分かりません。
が、そこが港町という事を考えれば、『海産物』と考えるのが妥当でしょう。
そして380円という手頃な値段から察するに、その土地の人間にとっては、さほど珍しいものでも無いのです。
ラーメンが一杯600円である事から考えて、恐らくミヨとは、『サイドメニュー』の一種。
まず餃子でビールを飲み、良い頃合いになったらラーメンでシメる……の、『餃子的位置付け』なのでしょう。
それが海産物なれば、塩辛などの珍味系か、又は何かの刺身が想像されますが……。
と、その時です。同僚が店の玄関脇に、大きな水槽を発見。
中を覗き込むと、そこには何とも形容し難い、『イボイボの無いナマコ』の様な生物が!
そんな水槽を眺めるボクら、当然考えていたのは、皆同じ事です。
― これが『ミヨ』なのか?(悩)
皆で話し合いますが、生憎その正体を知る者は無く、推理は暗礁に。
そしてやって来た店員さんに確認を取ると、確かにミヨとは、その水槽の中の生物の事なのだとか。
とても美味そうには見えませんでしたが、地元の方々には、珍味として食べられているのだそうです。
そんなミヨを横目に、ラーメンを啜るボク。
一度は『知らない』と言ったものの、心のどこかに引っ掛かる想いに、一体これは何だろう? と考えます。
そうして食事を終え、店を後にし、車の椅子に座りながら……不意に蘇る記憶!
ボク「今のきっと、『ちょうちょ貝』だ!(叫)」
記憶の底から蘇った名前、蝶々貝。
それはまるで『殻の無いアワビ』の様な格好をしており、中に蝶々の形をした貝殻(骨?)が入っているのですよ。
ボクがミヨを観た時にすぐにそれと気付かなかったのは、きっとあの店の蝶々貝が、桁外れに巨大だったからなのでしょうね。
そんなボクの発言に、キョトンとした表情を浮かべる、同僚と上司。
そして二人、顔を見合わせ……。
同僚「……」
上司「……」
ちょうちょ貝って何!?(汗)
どうやらあれを『蝶々貝』と呼んでいるのはボクだけだった様で、皆には分からない様子。
で、仕方が無いので「中に蝶々みたいな貝殻が入っているんだよ〜!(汗)」と説明をしました。
結局通じませんでしたけどね? まあ、それは致し方無し。
そうしてそれから数時間後、オフィスに戻ったボクと同僚は、「今日はこれで帰るべ〜」と荷物を纏めていました。
すると不意に背後から、上司が「あっ!」と叫ぶ声が。
どうやら上司、PCに向かい、何かを調べていた様子です。
ボク「どうしたんですか?」
上司「蝶々貝を調べたら、これが出てきた!」
ボク「ああ、確かにこれが『蝶々貝』ですよ♪」
上司「全く、蝶々貝って何かと思ったら、『ムイ』だったのか」
ボク「……」
同僚「……」
ムイって何!?(汗)
で、後で調べて分かったのですが、どうやらそれらは全て方言!
正式名称『オオバンヒザラガイ』という、貝の仲間だったのですよ。
それが地方により『ミヨ』になったり『蝶々貝』になったり、果ては『ムイ』などという得体の知れない名で呼ばれていたのです。
全ては『アイヌ文化の混じる北海道』ならではの話……言葉とは、実に難しいものです(汗)。
―――
はい、今日はそんな、『方言のお話』でした。
で、何故ボクがいきなりこんな話をしたのかと言えば、当然そこには理由がある訳です。
その理由とは……。
今日が3月4日(ミヨ)だったからーっ!(きっぱり!)
因みに6月1日は、ムイの話をしようと思います。話題なんて無いけど。